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ちいさい石と川のはなし

 

あるところに

うつくしい

ちいさな川がありました

川の水は

どこまでも澄んでいて

かたちを変えながら

流れる様子は

見ていて飽きることがなく

そのせせらぎは

心に寄り添うように

しっとりと耳の奥まで響き

かたく閉じたこころを

やさしくほぐしてくれました

水気を含んだ空気は

呼吸のたびに体の中に取り込まれ

隅々までいきわたると

乾いた体を内側から

潤してくれました

川の水は

思わず声を上げてしまうほど

冷たいものでしたが

手足を浸せば

体の芯まで

清らかになるように感じました

口に運ぶと

その冷たさとは裏腹に

やわらかくとろけるように

口の中に広がりました

導かれるように

喉奥へと流れると

体中の細胞が

生き返るような感じがしました

川は

その近くに住む者たちにとって

なくてはならないものでした

 

川は

誰からも

愛されていました

​​

こころもからだも

潤してくれる川でした

川の底には

ちいさな石がいくつか

ひっそりと沈んでいました

射し込む光をあびて

きらきらと輝くこの石たちもまた

川の魅力のひとつでした

長い年月が流れ

ちいさな石たちは

川のなかで

静かに数を増やし

積み重なっていきました

石たちは

流れを塞き止め

川幅を狭めました

石はただそこで

じっとしてしまっただけでしたが

川の流れはだんだんと

滞るようになり

水も濁っていきました

石はただそこで

じっとしてしまっただけでした

 

そうしてまた

時間が過ぎていきました

 

そんなある日

川にひとりの「小石ひろい」が

あらわれました

「小石ひろい」は

川の中にあるちいさな石を

集めています

集めた石を「布」で磨きあげ

それを売って

生計を立てていました

小石ひろいの持つ布は

どこにでもある

ふつうの布のようでしたが

その布で石を磨くと不思議と

石達はまるで眠りから覚めたように

まばゆいほどに光を放つのでした

小石ひろいの売る石は

宝石より高く売れることも

ありました

かつて誰からも愛された小川には

ちいさな石がたくさん

沈んでいたので

小石ひろいは

この川のそばに

しばらくいることにしました

小石ひろいは

毎日ゆっくりと

石を拾いました

「急いではいけない」

「一度にたくさんひろってはいけない」

といって

少しずつ石を拾いました

毎日数個の石を拾っては

大切そうに布で磨き

陽の光に当て

月の光に当て

また布でやさしく

磨きました

小石ひろいは

石を磨くとき

石にちいさな声で

なにかを

ささやいているようでした

そうして

しばらくすると

川の水が澄んできました

 

澄んだ水のなかに

何かがすこし見えました

川は少しずつ本来の流れを

取り戻しました

小石ひろいは

毎日ゆっくりと

石を拾いました

 

「急いではいけない」

「一度にたくさんひろってはいけない」

といって

少しずつ石を拾いました

石にちいさな声で

なにかをささやきながら

小石ひろいは

​今日も

あなたのなかに

幾重にも重なってしまった

ものたち

それらを解放してあげましょう

そうすると

ほんとうのじぶんが

顔を出してくれます

 

 

ほんとうのじぶんに再会すると

すべてがありのままでいいこと

すべては調和していることに

気がつきます

安心して生きていいこと

いつも自然体なじぶんで

いられる心地よさを

あなたも

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